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2023年10月11日水曜日

【実測シリーズ】ポータブルレオメータによる測定例_周波数依存からみる緩和挙動

前回に続いて、

【実測シリーズ】Surfgauge 試作室_ハンディな ポータブル レオメータ 

にて紹介した、ハンディレオメータの測定事例を紹介いたします。


レオメータによる動的粘弾性の測定は、上記での投稿でお見せした動画のように、

正弦振動により、材料にひずみを与えます。


一般にレオメータは、この振動の振幅と、周波数を変化させることができます。

そこで、レオメータの主な測定と評価方法は、以下のようなものがあります。


1)振動の周波数を固定し、振幅を、小から大へ変化させていくことで、主に、

降伏点前と、後での材料の応答性の変化を観察する。

2)周波数も、振幅も固定で、時間の経過に伴う材料の変化を観察する。

前回投稿の、接着剤の硬化過程の観察がこれにあたります。

3)周波数も、振幅も固定で、温度を変化させたときの材料の変化を観察する。

4)振幅を固定し、周波数を変化させることで、材料の緩和挙動を観察する。


まずこちらの動画をご覧ください。


いわゆるシリパテを、ゆっくり引っぱったときと、素早く引っぱったときの挙動の
違いを撮影したものです。

素早く引っぱったとき、シリパテは伸びることなく、ブチっとちぎれてしまい、
その断面は平らで、その面もエッジが立っていることがわかると思います。

一方で、ゆっくり引っぱると、シリパテは伸びるとともに、タラーっと垂れて
いきます。


前者は、まさに固体的な挙動であり、後者は、液体的な挙動です。


この様子を、レオメータの測定でどのように表現できるのか。

この時、材料の、緩やかな動きへの応答性と、素早い動きへの応答性を見るため

に、上記、4)の測定方式を試してみます。


結果は、以下の通りです。

横軸 :周波数 [Hz]

左縦軸:貯蔵・損失弾性率 [KPa]

右縦軸:位相差 [°]

赤曲線:貯蔵弾性率、青曲線:損失弾性率、黄曲線:位相差


低周波数から高周波数に向かって、弾性率が文字通り、けた違いに増加している

ことがわかります。

つまり、かたくなっているということになります。


実際、シリパテをゆっくり引っぱったときは、力を必要とせず、抵抗感なく

引っぱることができました。

一方で、素早く引っぱるときは、手に力が入り、抵抗感も感じました。


過去の投稿でも書きましたが、

かたい = 固体、やわらかい = 液体 

は、必ずしも成立しないことがあります。


では、タラーっと垂れる流体的な挙動と、断面が平らで、エッジがっている

という固体的な挙動については、このデータからどのように見ることができる

のでしょうか。


もう少し高周波数まで測定を行えばよかったのですが、いずれにしましても、

グラフからは、高周波数に行くほど貯蔵弾性率の支配性が増し、つまり固体的な

応答をしていることがわかり、

低周波数に行くほど、損失弾性率の支配性が大きく増していっている、つまり

液体的な応答をしていることがわかります。


ここで、このグラフの横軸は周波数、つまりは速度ということになるため、その

逆数は時間になります。

与えているひずみ(振幅)が一定であれば、弾性率の変化は、応力の変化という

ことになりますので、この弾性率のグラフは、緩和曲線とみることができます。


緩和している状態とは、貯蔵成分が限りなく消失している状態といえます。

通常の応力緩和試験では、応力の抜け具合はわかりますが、貯蔵成分の残留に

ついては、明確にはわかりません。

動的粘弾性測定を用いれば、損失成分と、貯蔵成分の値を比較したり、位相差の

値から、これがわかります。


また、ある時間における緩和状態を知りたい場合、通常の応力緩和試験では、

短時間から通貫して、その時間まで緩和試験を行わなくてはなりませんが、

動的粘弾性を用いれば、その時間の逆数となる周期、一点を測定すればよいと

言えます。


なお、緩和については、過去の投稿、

粘弾性について5)_緩和について

【実測シリーズ】緩和時間の測定

などをご参照ください。


動的粘弾性測定の、情報量が多く、興味深い一面が見れたように思いますが、

いかがでしたでしょうか。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。



2023年10月9日月曜日

【実測シリーズ】ポータブルレオメータによる測定例_硬化挙動評価

前回投稿の【実測シリーズ】Surfgauge 試作室_ハンディな ポータブル レオメータ

にて紹介した、ポータブルレオメータによる測定例を紹介いたします。



今回、シリコーン樹脂系弾性接着剤の硬化挙動について、測定を行いました。

下図、測定結果になります。


横軸 :時間 [分]
左縦軸:貯蔵・損失弾性率 [KPa]
右縦軸:位相差 [°]

赤曲線:貯蔵弾性率
青曲線:損失弾性率
黄曲線:位相差

測定開始時は、損失弾性率が貯蔵弾性率を大きく上回り、位相差も90°近辺の

値を示していることから、試料が液体状態であることがわかります。


35分くらいの時点で、位相差が45°を示し、貯蔵・損失弾性率のグラフが

クロスしています。

ここで、液体から固体への遷移点として、硬化時間の判定として定義するという

使い方ができます。


この接着剤を使用する場合、30分程度は、接着面が動かないように固定しておく

必要がありそう、といったような判断ができそうです。


その後、緩やかに位相差が低下し、弾性率が上昇していくことで、完全に固定化

していく様子がわかります。


動的粘弾性の測定は、弾性率をかたさの情報にくわえ、貯蔵・損失成分に、成分

わけできるため、非常に多くの情報を与えてくれます。


動的粘弾性の測定原理については、過去の投稿

粘弾性について6)_動的粘弾性の測定原理

をご参考いただければと思います。


また近々、周波数依存の測定を行った例をご紹介させていただければと思います。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


2023年10月3日火曜日

【実測シリーズ】Surfgauge 試作室_ハンディな ポータブル レオメータ

 以前の投稿、

「【実測シリーズ】Surfgauge 試作室_ハンディなポータブル レオメータの提案」

にて、ポータブルレオメータの試作機を紹介させていただきました。


ポータブル機器として、より使い勝手の良さを検討し、量産試作が完成いたしました。

外観と、サイズ感は以下のような感じです。


機能と特徴は、

1)
使い勝手を考慮し、ひずみ量と周波数は、有段で設定変更できるようにしています。
側面の上方に設置しているボタンで、それぞれ数段階の切り替えが可能です。

2)
ディスプレイを本体に搭載し、
    ・弾性率(複素、貯蔵、損失)
    ・位相差
    ・周波数
    ・ひずみ量
が、表示されます。
測定しながら、リアルタイムで確認することができますので、検査などの現場使いに
適していると思います。
(弾性率のシンボルに「G」が使用されていますが、この装置は、縦ひずみでの測定の
ため、「E」に変更予定です。。。)

3)
測定子については、
 ・円板型のピストン2種(大、小)
 ・その他(ピン型、円すい型、ナイフエッジ型)
等に対応しています。

円板型のピストンについては、ピストンの断面積と荷重値から応力が算出され、サンプル
の厚みも計測されますので、弾性率[Pa]、ひずみ量[-]の出力が可能です。

その他の測定子については、荷重値[N]と、変形量[mm]から、弾性係数を[N/mm]と
して出力します。

4)
押し込みのモードと、引き上げの両モードを備えました。
押し込みモードは、材料の弾性率の測定に。
引上げモードは、塗装面などの上でそのまま測定することで、塗膜の硬化課程などを
調べることができます。

5)
弾性率だけでなく、位相差のキャリブレーションに対応しています。
レオメータを知っている方にとっては、これは気になるところではないでしょうか。
なお、完全なひずみ制御を採用しているため、変位量については、キャリブレーション
不要です。

6)
以前、紹介した試作機からアクチュエータを変更し、より小さなひずみ量の制御が可能
となりました。


動きがわかりやすいように、かなり大きな振動を与えてますが、切り取った除振パッドを
大ピストンを用い、測定している動画です。
周波数を、適当に切りかえています。



動作の確認、調整のため、いろいろな試料を測定していますが、やはり動的粘弾性の
測定は非常に興味深く、面白いです。
測定例なども、この場であげさせていただき、シェアさせていただければと思います。

主に品質検査などに活躍できるのではないかと期待をしています。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

2021年6月5日土曜日

【実測シリーズ】Surfgauge 試作室_ハンディな ポータブル レオメータの提案


いい加減、コロナ禍の閉塞感を感じている方も、いらっしゃるのではないかと
思いますが、いかがお過ごしでしょうか。


現在、今回のタイトルにある、ハンディタイプのレオメータを開発中です。

概ね、システムは仕上がってきたため、実機の動作確認も兼ねて、アプリケーション
として考えられる対象物を、測定してみる、ということを行っています。


少し近い物性の測定器では、粘度計や、硬度計。
これらは、ハンディでポータブルなタイプの測定器が上市されています。

しかし、これまで、手持ちサイズで、動的粘弾性の測定が可能な装置は、まったく普及
されていないように見受けられます。

どのようなところにニーズがあるかは、他のポータブル測定器と同じであるかと
思いますが、一般的には、例えば、

・サンプルが切り出せない(大きい、ラボの外部・遠方にある など)
・現象を測定器上で再現するのではなく、現場で起きている、そのままの現象を
 測定したい
・経時変化が著しく、その場で、すぐに測定する必要がある
・品管などで、汎用的に使いたい

などでしょうか。

とりわけ、動的粘弾性の測定に関していえば、例えば、

塗料や接着剤の硬化過程を、塗布面から直接測定したい。

とか、
食品関係では、食感と粘弾性に、深い関連性がある、米、もち、かまぼこ、ゼリー
などを、調理・加工後、すぐに測定したい場合、

また、
ドウ(パンの生地)のように、練ってから、測定するまでに過発酵してしまい、
すると、テクスチャが変わってしまうため、時間が命だったりする食材など。

その他、
肌、筋肉など、人体を構成する部位の測定。

他にも、色々とニーズはあるかと思います。


ここで、装置を紹介したいと思いますが、
装置のサイズ感、外観は、以下のようなものになります。


装置下面を、任意のサンプル表面に接触させて、測定を行います。

下面には、縦方向に正弦周期的にひずみを与える測定子が備えられており、変形を
与えると同時に、周期的に変化する荷重値を測定します。

変位と荷重の正弦波が得られると、粘弾性の解析が可能になりますが、よろしければ、
概要は、過去の投稿、
をご参照いただければと思います。

なお、測定子については、
形状は、ピン状のもの、球面状のもの、平面状のものなど、
また、これらのサイズを細い・太い、小さい・大きい 
を用意しており、測定対象の性質や、かたさなどから、適切なものを選択できる
ようにしています。


ここからは、測定例の一部を紹介したいと思います。

以下は、接着剤の測定例です。
○・・・貯蔵弾性成分(E')
●・・・損失弾性成分(E")
×・・・位相差(δ)[°]

横軸は、時間[分] です。
右縦軸は、位相差[°] です。
E', E"については、現状、まだ単位はついていませんが、弾性率に比例した値です。
対数軸となっている、縦軸のスケールをご参照ください。

測定開始から、10分てまえのところで、E' = E" (δ = 45°) を示し、液体から
固体への遷移を迎えています。
このように、貯蔵・損失に成分分けすることで、硬化判定の一つの定義を、与えて
くれます。


次は、水溶性塗料の測定例です。
グラフのみかたは、上記、接着剤の例と同じです。

水溶性のためか、接着剤にくらべ、硬化に時間がかかっていることがわかります。

また、硬化前のところでは、データが大きく「ガタ」ついているのがわかるかと
思いますが、硬化前の塗料が、かなりゆるいため、荷重センシングに限界がある
ためかと思います。

これを解決するためには、測定子の面積を大きいものにするということが考えら
れますが、塗料との接触面積を大きくすると、溶媒が揮発しにくくなり、実際の
硬化速度と、かけ離れたデータになってしまう可能性があります。

これには、ナイフエッジ型の測定子を用い、包丁のようにつきたてて測定をする
という方法がかんがえられます。


ありそうで、なかった、できそうで、できなかった。

ハンディ型のレオメータについては、多くのニーズがあるのではないかと考えてます
が、間もなく、ラインナップに加わります。

こんなことで困っている。
こんなものを測定してみたい。

など、お問い合わせいただければ幸いです。


ここまで、読んでいただきありがとうございました。


2020年7月28日火曜日

【実測シリーズ】Surfgauge 試作室_せん断ひずみによる、動的粘弾性の測定


以前、
【実測シリーズ】コロナ自粛期間中 速報的 液膜粘弾性の測定
では、液膜の動的粘弾性の測定の実施例について、投稿をいたしました。

掲載しているデータは、マランゴニ効果、ギブス弾性力による、現象面視点の説明
からは、理にかなっているのでは、と、まとめました。

しかし、液膜を直接、延伸・収縮させる動作から、動的粘弾性の測定原理を利用し、
動的粘弾性パラメータを得て、解析、という実例が見つからないため、このデータの
妥当性が、よくわからないところはあります。

動的粘弾性の測定原理ついては、
粘弾性について6)_動的粘弾性の測定原理
をご参照ください。

このページでも解説している通り、応力とひずみ、両正弦波の振幅の比と、位相の差
が得られれば、動的粘弾性の測定、解析は可能です。

あるデータ範囲において、二つの波形それぞれの振幅値を検出し、その比をとって
複素弾性率を解析することは、システムとして、さほど難しいことではありません。

問題は、位相差の正しい測定と、その検証ではないかと思います。

動的粘弾性測定器は、主に、荷重(力)、位置の二つのセンシングデータを取得し、
後は、ほぼすべて、計算のみで成立しています。

システムは、入力されたセンシングデータを順番に処理しますので、ビット化された
二つの波形データは、交互に(必ずしも、一周期ごと、という意味ではありません)、
波形解析のために、蓄えられていくということになります。

あくまでも、二つのデータを交互に入力されることになりますので、二つのセンサ
固有の動作周期による遅延、A/Dコンバートの時間など、時間差を生む要因を、
物性以外で、システムに起因したものをいくつか思いつきます。

装置の動作は、メカニカルですし、例えば、データ入力のサンプリング周期を把握
することも可能ですので、数理的に補正することは可能です。

このように、「問題ないであろう」、というところまで持っていくことは可能と考え
ますが、
レオロジー的には、完全粘性体、完全弾性体というのはない、というように、例えば、
位相差が0° 、または、位相差が90° であることが担保されている、標準物というもの
が存在しませんので、実地的に検証することが基本的にはできません。

また、この実地的な検証は、動的粘弾性の動作周波数を変化させ、確認したいところ
ですが、
例えば、ある程度、厳密性を許容し、ニュートン流体とされる物体(位相差 ≒ 90°)
を用い、検証したとしても、高周波数域、つまり短緩和時間領域で、ニュートン流体
である物体は、えてして、低粘度です。

動的粘弾性測定機器にとって、低粘度(正確には、低貯蔵弾性率)の物体を、高周波で
測定することは、条件として苦手な方向です。
ここでまた不確定要素、または、その苦手要素を数理的に解消するために、補正する
などの必要性が出てくるため、気色悪い感じになってきます。

以上は、単なる開発上の苦労話として、厳密な話をしていますが、実際には、この
ようなことをさしおいても、動的粘弾性測定器は、非常に有用で、興味深いデータを
与えてくれますので、ある程度、「このようなものだと」気楽に使うのが、良いように
思えます。


ようやく、本題に戻りたいと思います。

【実測シリーズ】コロナ自粛期間中 速報的 液膜粘弾性の測定
では、液膜の動的粘弾性の測定の実施例を紹介しましたが、現象的な観点では、妥当
に思えましたが、前例が見当たらないことや、システムの信頼性を検証していません
でしたので、測定結果の妥当性がよくわかりませんでした。

今回、同じシステムを用い、せん断ひずみによる動的粘弾性測定に応用しました。

ここで、粘度値が既知で、ニュートン流体とされている、シリコーンオイルを用い、
・位相差が90° 付近で検出されるのか
・複素粘度(動的粘弾性測定から得られる粘度値)が、基準値に対し妥当か
について検証を行ってみました。

まず、せん断ひずみについては、こちらをご参照ください。
粘弾性について7)_伸長粘度はなぜ3倍? ~その1~_せん断ひずみと伸長ひずみ
一般的な、粘度計、動的粘弾性測定器で採用されている、ひずみ形態です。

せん断ひずみとは、以下のような立方体要素を、互い違いにずらした時の変形です。


粘度測定では、どこまでもずらし続けていくという格好になりますが、動的粘弾性の
測定では、下図のように、


立方体形状の状態を原点とし、正に、負に、対照的に振動させ、絶対値として、
ひずみ量、応力を得ます。
なお、動的粘弾性では、
・振動周波数を固定し、振幅の大きさを変化(通常は、小から大へ)
・振幅の大きさを固定し、振動周波数を変化
させて、それぞれの応答特性を得て、解析するなどします。


以下に、振幅の大きさ(ひずみ量)を変化させたときの結果を、示します。


3種のシリコーンオイル、以下の粘度値のものを使用しました。

  青:5 Pa・s
  赤:1 Pa・s
  緑:0.3 Pa・s

低ひずみ量域では、グラフが平坦でないことがわかりますが、変位、荷重(力)が、
微小、微弱なため、装置のセンシング能力に原因があるものと思います。
この辺は、まだブラッシュアップの余地があるように思います。

ひずみ量が、ある程度大きくなり、データが安定している領域では、位相差は、
概ね90° 付近で平坦性を示しているかと思います。


次に、ひずみ量を固定し、周波数のみを変化させて、測定した結果を示します。


ここでも、3種のシリコーンオイル、以下の粘度値のものを使用しました。

  青:5 Pa・s
  赤:1 Pa・s
  緑:0.3 Pa・s

ここで縦軸は、複素粘度で、動的粘弾性の測定から得られる、粘度値です。
複素粘度は、緩和領域では、いわゆる通常の回転式粘度計によるせん断粘度と、同じ
値を示します。

ちなみに、この緩和領域では、角周波数とせん断速度は、等価であるという、
コックス-メルツの経験則があります。
非ニュートン流体を測定したとき、粘度低下する程度に高せん断速度領域の、せん断
粘度値に、複素粘度は合致しない、というように言いかえられます。

この結果では、複素粘度が角周波数に対して一定で、ニュートン流体であることを
示しており、粘度値も、それぞれ、基準値と同じ値を示しています。

複素粘度は、複素弾性率を、周波数[Hz] × 2π で割り算して得られます。 周波数の
計測が正しいとして、複素粘度が妥当な値であれば、複素弾性率も妥当であると言え
ます。

概ねニュートン流体といってよい、今回使用した、シリコーンオイルの、ひずみ依存
測定では、位相差が、90° 付近の値が出ていることも確認できました。

今回、せん断ひずみ用の治具は、急造したものを使用したり、
低ひずみ領域のセンシング能力、をはじめとして、
システムとして、まだまだブラッシュアップの課題はありますが、とりあえず、今回は、
まずまず、妥当な測定結果が得られたものと考えています。

また、複素弾性率と、位相差から計算される、貯蔵弾性率も、損失弾性率も、まずまず
妥当な結果になるものと、判断できます。

ちなみに、商品情報によれば、今回使用したシリコーンオイルは、高粘度タイプのもの
ほど、シアシニング特性(高せん断速度で、粘度低下する)が出る傾向にあるよう
なので、厳密には非ニュートン流体といえます。
そのため、十分なシアシニングが起きない、低せん断速度、または低ひずみ領域では、
貯蔵弾性率成分が、まったくないとは言えない、という点に注意が必要と思います。


今回の、せん断ひずみによる粘弾性測定の結果も踏まえまして、
【実測シリーズ】コロナ自粛期間中 速報的 液膜粘弾性の測定
での、液膜の動的粘弾性の測定の実施例について、再評価もいただければ幸いです。

今回、見えてきた課題もブラッシュアップしつつ、多機能で手軽に使用できる、
動的粘弾性測定システムとして、商品紹介できるまで、開発を継続したいと思います。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


2020年5月15日金曜日

【実測シリーズ】Surfgauge 試作室_コロナ自粛期間中 速報的 液膜粘弾性の測定


前回の投稿から、だいぶん間があいてしまいました。

昨今のコロナ自粛期間中、いかがお過ごしでしょうか。


世の中、今回を機に、コロナ終了後も、在宅ワークの流れは促進されていくのかも
しれませんが、業務や時間効率が上がるのであれば、どんどんそのようになっていけば
良いのかなと思います。

私どもは、もともと在宅ワークの方式をとっていますが、特に不便を感じたことは
ありません。

ただ、今回のような自粛、緊急事態宣言下で、テンポラリーに在宅ワークを行っている
方は、お客様や、パートナーなどが稼働していなければ、やることもなくなってきて
しまうのではないかと想像します。

このような時は、「いつかやろう」、「ダメもとでやってみたかったこと」など、
最低の成果でもプラスマイナスゼロ、最悪でも会社やご自身に、損害を与えない結果
にしかならないようなことをやってみるのはいかがかと思いました。

申しました通り、もともと在宅ワークということもあり、ここまでの間、取り立てて
仕事のペースが変わることはなかったのですが、自粛の気分を変えたいと思い、
「いつかやろう」と考えていたこととして、液膜粘弾性測定装置の試作にトライして
みました。



前置きが長くなりましたが、今回のタイトルに戻りたいと思います。


当ブログでは、これまで、「粘弾性」に関係する内容がほとんどでした。

粘弾性については、主に、概念的なお話をさせていただきました。

粘弾性測定の実測については、本来は粘弾性の測定原理まで到達した後で投稿する、
という中期計画でした。

  ブログをかなりサボってしまっていたこと。
  「自粛の気分転換」。

これらはさることながら、
「液膜粘弾性の実測」については、なかなか目にすることはないはず、と思い、
今回、あげさせていただくことにしました。


いきなり測定データを示します。


白抜きのドットが貯蔵(バネ弾性)成分。
黒塗りのドットが損失(粘性)成分です。

バネ弾性、粘性成分については、よろしければ、こちらをどうぞ。
粘弾性について1)_学校の定期試験を例にとった説明
粘弾性について2)_固体はかたい、液体はやわらかい?

横軸は、周波数で、対数軸になっています。

食器用洗剤水溶液(確実にミセル濃度以上、正確な濃度は不明)の液(シャボン)膜
を作り、その膜をある方法で、ひっぱったり、縮めたりという動作を「正弦周期的」
に繰り返しました。

その際、膜の長さと、力の変化を、それぞれ正弦波のデータとして記録します。

変形の大きさと、力の関係から、弾性率が得られることを、
粘弾性について6)_伸長粘度はなぜ3倍? ~その1~_せん断ひずみと伸長ひずみ
で説明をいたしました。

これらの関係を正弦波で得ると、かたさである弾性率を、貯蔵成分と損失成分に分ける
ことができます。

この粘弾性の測定原理については、いずれの機会に投稿したいと思います。


往復運動の速度を上げていくと、特に貯蔵(バネ弾性)成分の顕著な上昇がみられます。


ミセル濃度を超える液膜には、洗剤に含まれる界面活性剤分子が、密に吸着し配向
しています。

界面活性剤の吸着密度に応じ、表面張力は低下します。

一方で、液膜を引き延ばし、表面積が増加すると、密であった界面活性剤が瞬間的
には「疎」の状態になりますので、液膜の表面では、界面活性剤濃度が低くなり、
瞬間的に表面張力は上昇します。
これは「ギブス弾性力」で説明されます。

液膜を引っ張ると、表面積を最小にして安定化をはかろうとする表面張力の作用に
より、縮まろうとしますので、表面張力はバネ弾性のように働きます。

以下、ウィキペディアで紹介されている動画を見ていただくと、イメージがよくつかめます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Surface_tension

いっぽうで、「疎」になった隙間には、すぐに界面活性剤が移動してきて、密の状態
になるため、表面張力を低下させます。
このメカニズムを「マランゴニ効果」とよびます。

高周波数領域では、液膜の表面積の増加に、界面活性剤の移動がおいつかないため、
弾性率が上昇し、
周波数が低い領域では、界面活性剤の移動がじゅうぶんにおいつくため、弾性率は
上昇することなく、安定していると、グラフからは理解できそうです。

低周波数領域では、弾性成分が粘性成分を上回り、並行で平坦なグラフになって
いますが、配向した界面活性剤が、構造として液膜の安定に寄与しているのでは
ないかと想像します。


いかがでしょうか。


今回、試験を行ってみて、例えば、

  起泡性、泡安定性、フォーミング、テクスチャーなどを検討する際の、液膜物性
  の評価。
  目的に合わせた材料設計時の、界面活性剤の選定。

などに、実用性のある測定方法になるのではないかと思いました。

試作機をブラッシュアップしながら、色々な液体を試してみたいというように思い
ました。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。