2021年1月18日月曜日

【実測シリーズ】Surfgauge 試作室_コロナ自粛期間中 速報的 流体解析の提案

 
2021年、初の投稿です。
というより、前回の投稿よりかなりご無沙汰になっておりました。

昨年、今では懐かしくもある、2020年の5月の自粛期間時いらい、コロナは、依然、
終息、収束を見せる気配がありません。

当時、こんな時こそ、「いつかやろう」、「ダメもとでやってみたかったこと」
など、最低の成果でもプラスマイナスゼロ、最悪でも会社やご自身に、損害を与え
ない結果にしかならないようなことをやってみるのはいかがかと、ブログにも投稿
しました。


今回、流体の流動解析を目的とした測定装置を考え、試作装置で測定した実例を
投稿したいと思います。


流体の解析に重要な物性として、粘度、表面張力、密度などがあり、
例えばよく聞くところでは、

レイノルズ数:
ρ: 密度
v: 平均速度
L: 特性長さ
µ: 粘度
ν: 動粘度

せん断粘度(µ) を用いることで、慣性力と、粘性力の比であるとして、わかりやすい
かと思います。

流動において、粘性力は、層流という整った流れを作る源泉であり、
慣性力は、より重たいものが速度づくと、乱流を作る源泉となる、
とみることができます。


ウェーバー数:
ρ: 密度
L: 特性長さ
V平均速度
σ: 表面張力


分子は、レイノルズ数と同じく、慣性力をあらわし、分母の表面張力との比をとり
ます。

スプレーやインクジェットのような高速の噴出、または、高速で液体がぶつかった
時の「しぶき」。
このような現象では、凝集力として作用する表面張力は、球形状の液滴を作り、
慣性力に支配されると、複雑な非球形状になります。


オーネソージ(オーネゾルゲ)数:

レイノルズ数と、ウェーバー数を組み合わせた無次元数です。
粘性力と、表面張力の関係性をあらわします。

例えば、噴出時に、引き延ばされた液滴のフィラメントの破断しやすさを特徴づける
など、自由表面を形成する流動場、液滴の形成において、使われるようです。


これら以外にも、流体力学解析に有効な無次元数は、多数ありますが、それらを
紹介することが目的ではありません。

ここで着目したいのは、代入する、粘度、表面張力の測定についてです。


解析対象となる流動現象で、流体の速度を見積もることができれば、少なくとも
上記で紹介した手法に当てはめ、解析することは可能です。


問題は、

液体のほとんどは非ニュートン流体であり、粘度値が、速度依存性を持つ。

表面張力についても、界面活性剤を混合した系では、動的表面張力として、表面張力は、活性剤の吸着速度に依存性を持つ。
この点は、【実測シリーズ】コロナ自粛期間中 液膜粘弾性の測定 の「マランゴニ効果」を、ご一読
いただければと思います。


粘度については、現場の流動速度から、どうにか、せん断速度を算出し、その
せん断速度での粘度値を得ることは、可能かも知れません。

一方で、動的表面張力の測定は、最大泡圧(バブルプレッシャー)法という、液中に
入れた細いノズルから、泡をポコポコと吐出し、吐出圧力から表面張力を算出する
方式が主流です。
この泡の吐出周期(速度)を変化させ、最大泡圧法固有の速度と、表面張力値を
対比づけしています。

この泡の吐出周波数と、せん断速度、現場の流動速度を、どのように換算するのか。
そうでなくとも、個別に測定した物性値の、速度・時間軸を合わせこむこと自体、
後にエラーがふくらんでいく要因になりそうです。


そこで、以下に、同一システム、同一の環境で、粘度と表面張力を同時測定した
一例を紹介します。
(測定システムの詳細については、割愛します)

以下、すべてのグラフで、
黒マル: インクジェット用 黒インク
黄マル: インクジェット用 黄インク
青マル: 水
・横軸 : 測定時に発生させる流動場の流速[m/sec.]
     (せん断速度に換算することも可能)


図1.粘度値[mPa・s]

黄が黒よりも多少高く、両インクともに、若干の非ニュートン性を示してます。


図2.表面張力[mN/m]


インクについては、黒の速度依存性が若干大きく、両インクとも、流動が高速である
ほど、表面張力が上昇傾向にあり、水と異なり、動的挙動を示してます。

上記、粘度、表面張力の測定結果から、無次元数を求めてみたのが、以下になります。


図4.レイノルズ数


図4.ウェーバー数


図5.オーネソージ数



いかがでしょうか。
測定・解析結果についての検討はしませんが、流速によって、流動特性が変わることが
わかります。

今回紹介した測定方式が実現することにより、

同一測定環境(時間・速度軸)で得られた物性から、流動性解析が可能

それ以外にも、

・一度の測定で、2つの物性値が得られ、測定の手間が省ける
・静的(低速)から、動的(高速)の測定が可能

といった特長があげられます。



ここまで読んでいただき、ありがとうございました。