2019年5月15日水曜日

【実測シリーズ】撹拌型 粘性評価器 SVE-1 を用いた「とろみ剤」の測定


前回の投稿以来、少し時間があいてしまいました。

今回は、攪拌型粘性評価器SVE-1を使って、とろみ剤水溶液の粘性を評価してみた
内容を、「実測シリーズ」として取り上げたいと思います。


SVE-1は、センサを内蔵した専用の測定スティックを用いて測定者の攪拌動作から流動
抵抗を検出し、回転数に応じた流動抵抗値や近似粘度を求めることができます。

装置の紹介ページはこちら


とろみ剤は、ジュースやスープなどに溶かし入れ、とろみをつけて飲みこみを容易にし、
誤嚥を防ぐ目的で用いられます。

とろみ剤は、カンキツ類やリンゴなどを原料としたペクチン、マメ科の植物から抽出
したグァーガム、微生物が生成するキサンタンガムを主原料としたものなど、
さまざまな種類があります。
多くは、粉末状の食品添加物として販売されています。


誤嚥によりひきおこされる肺炎は、高齢者の死亡原因としてかなり上位に位置します。
とろみ剤は、高齢化社会の現在、市場で注目されています。

嚥下補助食分野では、液体のとろみの強さは、3段階に分類されており(表1)、
とろみ度合の大きさを粘度で規定しています。
各とろみ剤メーカは、この粘度値をもとにとろみ剤の分量(目安)を定めています。


【表1
とろみの強さ
粘度(mPa.s)  
薄いとろみ
50~150
中間のとろみ
150~300
濃いとろみ
300~500
※日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類2013(とろみ)より
※粘度は、プレート型粘度計を用いて、測定温度20℃、せん断速度50sec-1における値とする。



今回、とろみ剤を添加する液体は常温の水とし、とろみの強さに応じた種々のとろみ
液体の粘度を測定しました。

とろみ剤の投入量や調整方法についてはメーカが推奨する手順にならい、使用方法の
概要は以下のとおりです。
なお、攪拌の際は、SVE-1の専用スティックを用いて攪拌しました。

・液体にとろみ剤を投入したら、すぐに攪拌する(30秒程度)
・攪拌してから2~3分放置するととろみがつく


図1~3に、とろみ剤の添加量ごとの結果を図示します。
図中には、それぞれ攪拌中および攪拌後3分放置後の粘度を比較しています。
縦軸は粘度(単位:mPa.s)、横軸は測定時間()です。


            【図1


            【図2


            【図3


いずれの添加量においても、攪拌に伴い粘度が徐々に増加していることがわかります。
このことは、攪拌動作中に流動抵抗が増していく感覚とも一致しています。

また、いずれの添加量においても攪拌後3分放置することで増粘していることから、
メーカの使用方法にあるとおり、時間をおくと、とろみがついていくことがわかります。


添加量の違いごとの粘度値を、図4にまとめました。
添加量の増加に伴って粘度も高くなっており、たしかにとろみが強くなっていることが
わかります。


            【図4


なお、今回SVE-1で測定された粘度はいずれもとろみの分類(表1)で提示されている
粘度より高くなっています。

これは、SVE-1で測定したときの攪拌によるせん断速度(回転数としては約4回転/秒)
と、とろみ分類で規定された粘度のせん断速度条件(50sec-1)が異なるためだと考え
られます。

なお、定められているせん断速度(50sec-1)は、流体食品が、人間の咽喉を流れる
ときの速度を根拠としているようです。

とろみ剤溶液は、いわゆる「非ニュートン」性をしめし、せん断速度の増加に伴って
粘度が減少する性質があります。(図5参照)
攪拌動作は、せん断速度に換算するとおそらく50sec-1よりも低いのではないかと
考えられます。


            【図5】とろみ剤のせん断速度と粘度の関係のイメージ


ところで、とろみ剤でとろみのついた飲み物について、少し時間をおいてから飲む
というケースもあるかと思います。

その際、時間経過によってとろみが変わってしまうようでは、再度調整する必要が生じ、
利便性に欠けるため、とろみは、変わらずに安定していることが望ましいです。

そこで、中間のとろみ(1.8g)に調整した、とろみ剤水溶液について、攪拌直後からの
粘度の経時変化を調べてみました。(6)

この結果では、3, 10, 20分後において粘度はほぼ同等であり、とろみは安定・保持
していることがわかりました。


            【図6


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

このブログでは、「実測シリーズ」として、今後も、測定データを掲載した内容を、
投稿したいと思います。