前回の投稿から、だいぶん間があいてしまいました。
昨今のコロナ自粛期間中、いかがお過ごしでしょうか。
世の中、今回を機に、コロナ終了後も、在宅ワークの流れは促進されていくのかも
しれませんが、業務や時間効率が上がるのであれば、どんどんそのようになっていけば
良いのかなと思います。
私どもは、もともと在宅ワークの方式をとっていますが、特に不便を感じたことは
ありません。
ただ、今回のような自粛、緊急事態宣言下で、テンポラリーに在宅ワークを行っている
方は、お客様や、パートナーなどが稼働していなければ、やることもなくなってきて
しまうのではないかと想像します。
このような時は、「いつかやろう」、「ダメもとでやってみたかったこと」など、
最低の成果でもプラスマイナスゼロ、最悪でも会社やご自身に、損害を与えない結果
にしかならないようなことをやってみるのはいかがかと思いました。
申しました通り、もともと在宅ワークということもあり、ここまでの間、取り立てて
仕事のペースが変わることはなかったのですが、自粛の気分を変えたいと思い、
「いつかやろう」と考えていたこととして、液膜粘弾性測定装置の試作にトライして
みました。
前置きが長くなりましたが、今回のタイトルに戻りたいと思います。
当ブログでは、これまで、「粘弾性」に関係する内容がほとんどでした。
粘弾性については、主に、概念的なお話をさせていただきました。
粘弾性測定の実測については、本来は粘弾性の測定原理まで到達した後で投稿する、
という中期計画でした。
ブログをかなりサボってしまっていたこと。
「自粛の気分転換」。
これらはさることながら、
「液膜粘弾性の実測」については、なかなか目にすることはないはず、と思い、
今回、あげさせていただくことにしました。
いきなり測定データを示します。
白抜きのドットが貯蔵(バネ弾性)成分。
黒塗りのドットが損失(粘性)成分です。
バネ弾性、粘性成分については、よろしければ、こちらをどうぞ。
粘弾性について1)_学校の定期試験を例にとった説明
粘弾性について2)_固体はかたい、液体はやわらかい?
横軸は、周波数で、対数軸になっています。
食器用洗剤水溶液(確実にミセル濃度以上、正確な濃度は不明)の液(シャボン)膜
を作り、その膜をある方法で、ひっぱったり、縮めたりという動作を「正弦周期的」
に繰り返しました。
その際、膜の長さと、力の変化を、それぞれ正弦波のデータとして記録します。
変形の大きさと、力の関係から、弾性率が得られることを、
粘弾性について6)_伸長粘度はなぜ3倍? ~その1~_せん断ひずみと伸長ひずみ
で説明をいたしました。
これらの関係を正弦波で得ると、かたさである弾性率を、貯蔵成分と損失成分に分ける
ことができます。
この粘弾性の測定原理については、いずれの機会に投稿したいと思います。
往復運動の速度を上げていくと、特に貯蔵(バネ弾性)成分の顕著な上昇がみられます。
ミセル濃度を超える液膜には、洗剤に含まれる界面活性剤分子が、密に吸着し配向
しています。
界面活性剤の吸着密度に応じ、表面張力は低下します。
一方で、液膜を引き延ばし、表面積が増加すると、密であった界面活性剤が瞬間的
には「疎」の状態になりますので、液膜の表面では、界面活性剤濃度が低くなり、
瞬間的に表面張力は上昇します。
これは「ギブス弾性力」で説明されます。
より、縮まろうとしますので、表面張力はバネ弾性のように働きます。
以下、ウィキペディアで紹介されている動画を見ていただくと、イメージがよくつかめます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Surface_tension
いっぽうで、「疎」になった隙間には、すぐに界面活性剤が移動してきて、密の状態
になるため、表面張力を低下させます。
このメカニズムを「マランゴニ効果」とよびます。
高周波数領域では、液膜の表面積の増加に、界面活性剤の移動がおいつかないため、
弾性率が上昇し、
周波数が低い領域では、界面活性剤の移動がじゅうぶんにおいつくため、弾性率は
上昇することなく、安定していると、グラフからは理解できそうです。
低周波数領域では、弾性成分が粘性成分を上回り、並行で平坦なグラフになって
いますが、配向した界面活性剤が、構造として液膜の安定に寄与しているのでは
ないかと想像します。
いかがでしょうか。
今回、試験を行ってみて、例えば、
起泡性、泡安定性、フォーミング、テクスチャーなどを検討する際の、液膜物性
の評価。
目的に合わせた材料設計時の、界面活性剤の選定。
などに、実用性のある測定方法になるのではないかと思いました。
試作機をブラッシュアップしながら、色々な液体を試してみたいというように思い
ました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。