2021年6月5日土曜日

【実測シリーズ】ハンディな ポータブル レオメータの提案


いい加減、コロナ禍の閉塞感を感じている方も、いらっしゃるのではないかと
思いますが、いかがお過ごしでしょうか。


現在、今回のタイトルにある、ハンディタイプのレオメータを開発中です。

概ね、システムは仕上がってきたため、実機の動作確認も兼ねて、アプリケーション
として考えられる対象物を、測定してみる、ということを行っています。


少し近い物性の測定器では、粘度計や、硬度計。
これらは、ハンディでポータブルなタイプの測定器が上市されています。

しかし、これまで、手持ちサイズで、動的粘弾性の測定が可能な装置は、まったく普及
されていないように見受けられます。

どのようなところにニーズがあるかは、他のポータブル測定器と同じであるかと
思いますが、一般的には、例えば、

・サンプルが切り出せない(大きい、ラボの外部・遠方にある など)
・現象を測定器上で再現するのではなく、現場で起きている、そのままの現象を
 測定したい
・経時変化が著しく、その場で、すぐに測定する必要がある
・品管などで、汎用的に使いたい

などでしょうか。

とりわけ、動的粘弾性の測定に関していえば、例えば、

塗料や接着剤の硬化過程を、塗布面から直接測定したい。

とか、
食品関係では、食感と粘弾性に、深い関連性がある、米、もち、かまぼこ、ゼリー
などを、調理・加工後、すぐに測定したい場合、

また、
ドウ(パンの生地)のように、練ってから、測定するまでに過発酵してしまい、
すると、テクスチャが変わってしまうため、時間が命だったりする食材など。

その他、
肌、筋肉など、人体を構成する部位の測定。

他にも、色々とニーズはあるかと思います。


ここで、装置を紹介したいと思いますが、
装置のサイズ感、外観は、以下のようなものになります。


装置下面を、任意のサンプル表面に接触させて、測定を行います。

下面には、縦方向に正弦周期的にひずみを与える測定子が備えられており、変形を
与えると同時に、周期的に変化する荷重値を測定します。

変位と荷重の正弦波が得られると、粘弾性の解析が可能になりますが、よろしければ、
概要は、過去の投稿、
をご参照いただければと思います。

なお、測定子については、
形状は、ピン状のもの、球面状のもの、平面状のものなど、
また、これらのサイズを細い・太い、小さい・大きい 
を用意しており、測定対象の性質や、かたさなどから、適切なものを選択できる
ようにしています。


ここからは、測定例の一部を紹介したいと思います。

以下は、接着剤の測定例です。
○・・・貯蔵弾性成分(E')
●・・・損失弾性成分(E")
×・・・位相差(δ)[°]

横軸は、時間[分] です。
右縦軸は、位相差[°] です。
E', E"については、現状、まだ単位はついていませんが、弾性率に比例した値です。
対数軸となっている、縦軸のスケールをご参照ください。

測定開始から、10分てまえのところで、E' = E" (δ = 45°) を示し、液体から
固体への遷移を迎えています。
このように、貯蔵・損失に成分分けすることで、硬化判定の一つの定義を、与えて
くれます。


次は、水溶性塗料の測定例です。
グラフのみかたは、上記、接着剤の例と同じです。

水溶性のためか、接着剤にくらべ、硬化に時間がかかっていることがわかります。

また、硬化前のところでは、データが大きく「ガタ」ついているのがわかるかと
思いますが、硬化前の塗料が、かなりゆるいため、荷重センシングに限界がある
ためかと思います。

これを解決するためには、測定子の面積を大きいものにするということが考えら
れますが、塗料との接触面積を大きくすると、溶媒が揮発しにくくなり、実際の
硬化速度と、かけ離れたデータになってしまう可能性があります。

これには、ナイフエッジ型の測定子を用い、包丁のようにつきたてて測定をする
という方法がかんがえられます。


ありそうで、なかった、できそうで、できなかった。

ハンディ型のレオメータについては、多くのニーズがあるのではないかと考えてます
が、間もなく、ラインナップに加わります。

こんなことで困っている。
こんなものを測定してみたい。

など、お問い合わせいただければ幸いです。


ここまで、読んでいただきありがとうございました。


2021年4月17日土曜日

閑話休題 -SDGs-


久々の投稿となりましたが、今回、これまでのテーマからはかなり変わり、

SDGsに関連した内容を投稿しようと思いました。


SDGsとは、「持続可能な開発目標」のことで2030年までに、持続可能で

よりよい世界を目指す国際目標として設定されているそうです。

17のゴール・169のターゲットから構成されているようですが、開発の内容として、

該当、適応をする範囲はある程度、解釈などにより幅広いように思います。


先進国を中心としたフードロスと、途上国を中心とした、飢餓人口の増加。

肉食と環境問題。

これらを解決する技術開発の一つとして注目されている、植物性代替肉について、

取り上げたいと思います。


フードロスは、

食品の生産、加工、廃棄時の、

・エネルギーの浪費による気候変動

・化学物質の排出

などを引き起こしていると指摘されています。


肉食と、そのための畜産は、

・温室効果ガス排出の約15%

・地球上の不凍地の約1/4が家畜放牧に使用

・地球上の全耕作地の1/3が家畜用飼料生産に使用

・肥料、淡水、土壌の無駄遣い

・動物愛護

・健康被害(虚血性心疾患、脳卒中、ガン)

などの問題の原因になっていると指摘されています。


2050年までに地球上の人口は、100億人ごえの見通しで、

・ 食肉の供給は、現在の70%増が必要

・ともない、温室効果ガスは約92%増

との予想もあります。 


植物中心の食事にかえていくことで、気候変動や健康被害リスクを回避する

という動きがあり、代替肉への期待が高まっています。


代替肉への期待に対して、

1)植物性たんぱく質の利用

2)培養肉

これらの技術開発が競い合っているようです。


ただし、培養肉は、

・そもそも、動物性原料である、ウシ胎児の血清が必要

・製造難易度が高い

・筋肉細胞を成長させるため、脂肪成分がない

・製造時に高いエネルギーが要される

・温室効果ガス削減は7%程度にしかならない(対牛肉)

など、課題が多いようです。


 一方で、植物性代替肉は、上記の培養肉の課題に対しても優位で、

加熱溶融混錬方式という、食品加工でも、もともと使用されている製法を応用でき、

フィレットタイプや、ミンチタイプなど、種々の加工にも容易に対応できる点でも

優位性があるようです。


大豆を原料とした植物性代替肉は、一部、ハンバーガーファストフード店やスーパ-

などでも、ソイミートという名称などで販売されています。


すでに試された方の中には、大豆のにおい、歯ごたえ、などで、まだまだ肉には

とどかない、という感想を持たれた方もいるのではないかと思います。

このあたりが、植物性代替肉の主な課題といえそうです。

 

植物性代替肉は、たんぱく質が豊富な穀物(主に大豆)の粉末と水を、主なベース

原料とし、 これを、加熱溶融混錬方式の加熱、混錬、圧縮を要素とし、水素結合により、

組織化したたんぱく質が肉のような質感を生んでいるそうです。


混錬とは、よく練り、混ぜ合わせることですが、せん断により、機械的エネルギーを、

効果的に原料に与えるような設計になっているようです。


せん断といえば、これまで、当ブログで紹介をしてきた、レオロジーで非常になじみ

ですし、

「せん断ひずみ」については、よろしければ、

粘弾性について7)_伸長粘度はなぜ3倍? ~その1~_せん断ひずみと伸長ひずみ

を、ご参考いただければと思います。


表面張力といえば、分子間力相互作用ですので、やはり、植物性代替肉の製法は、

我々には非常になじみのある分野が関連しているように思いました。


SDGs的には、混錬時の加熱に要されるエネルギーの浪費は避けたいところで、熱の

かわりに他のエネルギー要素を、より効率的に与える方法と、分子間相互作用を、より

促進させるような方法でおぎなう。


思いたったら、手を動かすと、

いきなりですが、混錬の装置について考え、検証用に簡単な装置で、ミンチ状の代替肉を

イメージし、作ってみました。


以下が、大豆粉と水(+とある食品添加剤)でつくった代替肉(もどき)です。


右が、混錬加工直後のものです。太さは5mm程度です。

左が、一昼夜、水につけておいた後のものです。


単に、粉を水で混ぜて固めただけだと、水にいれて間もなく、崩れてしまいますが、

若干膨潤してはいるものの、形状が保持されていることがわかると思います。

たんぱく質が組織化しているためと思われます。

触ってみると、弾力があります。


このサンプルは、実は、ほぼ加熱無しで混錬したものです。

多少粉っぽい個所も残されてますが、初の取り組みとしては、とりあえず、まずまず

のような気がします。

想定が正しい方向であったのではないかと、装置の改善、追加工などで、試してみたい

ことがいくつか出てきました。

人体を考えると、体温くらいの温度でも、十分に組織化させられるのではないか、とか、

その温度くらいまでは加熱しても良いかな、とか、そんな想像もふくらみます。



SDGsについては、原因と結果の因果関係が不明確な開発課題があることが指摘されて

いたり、パワーゲームの要素や、出来レース的なみかたもあったりと、このような

取り組みの問題点として、わからなくもないとは思います。


ただ、ファッション業界では、流行色が実はあらかじめ決められているように、企業や

経済活動的には、暗中模索でギャンブル的になってしまうよりは、開発の指針が明確に

されていることは、正直ありがたい、と思うのは事実かと思います。


時に、テーマを与えられることで、今回の投稿のように、ワクワクしたり、楽しく

なってくるようなこともあるように思います。



ここまで読んでいただきありがとうございました。


2021年1月18日月曜日

【実測シリーズ】コロナ自粛期間中 速報的 流体解析の提案

 
2021年、初の投稿です。
というより、前回の投稿よりかなりご無沙汰になっておりました。

昨年、今では懐かしくもある、2020年の5月の自粛期間時いらい、コロナは、依然、
終息、収束を見せる気配がありません。

当時、こんな時こそ、「いつかやろう」、「ダメもとでやってみたかったこと」
など、最低の成果でもプラスマイナスゼロ、最悪でも会社やご自身に、損害を与え
ない結果にしかならないようなことをやってみるのはいかがかと、ブログにも投稿
しました。


今回、流体の流動解析を目的とした測定装置を考え、試作装置で測定した実例を
投稿したいと思います。


流体の解析に重要な物性として、粘度、表面張力、密度などがあり、
例えばよく聞くところでは、

レイノルズ数:
ρ: 密度
v: 平均速度
L: 特性長さ
µ: 粘度
ν: 動粘度

せん断粘度(µ) を用いることで、慣性力と、粘性力の比であるとして、わかりやすい
かと思います。

流動において、粘性力は、層流という整った流れを作る源泉であり、
慣性力は、より重たいものが速度づくと、乱流を作る源泉となる、
とみることができます。


ウェーバー数:
ρ: 密度
L: 特性長さ
V平均速度
σ: 表面張力


分子は、レイノルズ数と同じく、慣性力をあらわし、分母の表面張力との比をとり
ます。

スプレーやインクジェットのような高速の噴出、または、高速で液体がぶつかった
時の「しぶき」。
このような現象では、凝集力として作用する表面張力は、球形状の液滴を作り、
慣性力に支配されると、複雑な非球形状になります。


オーネソージ(オーネゾルゲ)数:

レイノルズ数と、ウェーバー数を組み合わせた無次元数です。
粘性力と、表面張力の関係性をあらわします。

例えば、噴出時に、引き延ばされた液滴のフィラメントの破断しやすさを特徴づける
など、自由表面を形成する流動場、液滴の形成において、使われるようです。


これら以外にも、流体力学解析に有効な無次元数は、多数ありますが、それらを
紹介することが目的ではありません。

ここで着目したいのは、代入する、粘度、表面張力の測定についてです。


解析対象となる流動現象で、流体の速度を見積もることができれば、少なくとも
上記で紹介した手法に当てはめ、解析することは可能です。


問題は、

液体のほとんどは非ニュートン流体であり、粘度値が、速度依存性を持つ。

表面張力についても、界面活性剤が混合した系では、動的表面張力として、表面張力は、活性剤の吸着速度に依存性を持つ。
この点は、【実測シリーズ】コロナ自粛期間中 液膜粘弾性の測定 の「マランゴニ効果」を、ご一読
いただければと思います。


粘度については、現場の流動速度から、どうにか、せん断速度を算出し、その
せん断粘度速度での粘度値を得ることは、可能かも知れません。

一方で、動的表面張力の測定は、最大泡圧(バブルプレッシャー)法という、液中に
入れた細いノズルから、泡をポコポコと吐出し、吐出圧力から表面張力を算出する
方式が主流です。
この泡の吐出周期(速度)を変化させ、最大泡圧法固有の速度と、表面張力値を
対比づけしています。

この泡の吐出周波数と、せん断速度、現場の流動速度を、どのように換算するのか。
そうでなくとも、個別に測定した物性値の、速度・時間軸を合わせこむこと自体、
後に大きなエラーを生む要因になりそうです。


そこで、以下に、同一システム、同一の環境で、粘度と表面張力を同時測定した
一例を紹介します。
(測定システムの詳細については、割愛します)

以下、すべてのグラフで、
黒マル: インクジェット用 黒インク
黄マル: インクジェット用 黄インク
青マル: 水
・横軸 : 測定時に発生させる流動場の流速[m/sec.]
     (せん断速度に換算することも可能)


図1.粘度値[mPa・s]

黄が黒よりも多少高く、両インクともに、若干の非ニュートン性を示してます。


図2.表面張力[mN/m]


インクについては、黒の速度依存性が若干大きく、両インクとも、流動が高速である
ほど、表面張力が上昇傾向にあり、水と異なり、動的挙動を示してます。

上記、粘度、表面張力の測定結果から、無次元数を求めてみたのが、以下になります。


図4.レイノルズ数


図4.ウェーバー数


図5.オーネソージ数



いかがでしょうか。
測定・解析結果についての検討はしませんが、流速によって、流動特性が変わることが
わかります。

今回紹介した測定方式が実現することにより、

同一測定環境(時間・速度軸)で得られた物性から、流動性解析が可能

それ以外にも、

・一度の測定で、2つの物性値が得られ、測定の手間が省ける
・静的(低速)から、動的(高速)の測定が可能

といった特長があげられます。



ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




2020年7月28日火曜日

【実測シリーズ】せん断ひずみによる、動的粘弾性の測定


以前、
【実測シリーズ】コロナ自粛期間中 速報的 液膜粘弾性の測定
では、液膜の動的粘弾性の測定の実施例について、投稿をいたしました。

掲載しているデータは、マランゴニ効果、ギブス弾性力による、現象面視点の説明
からは、理にかなっているのでは、と、まとめました。

しかし、液膜を直接、延伸・収縮させる動作から、動的粘弾性の測定原理を利用し、
動的粘弾性パラメータを得て、解析、という実例が見つからないため、このデータの
妥当性が、よくわからないところはあります。

動的粘弾性の測定原理ついては、
粘弾性について6)_動的粘弾性の測定原理
をご参照ください。

このページでも解説している通り、応力とひずみ、両正弦波の振幅の比と、位相の差
が得られれば、動的粘弾性の測定、解析は可能です。

あるデータ範囲において、二つの波形それぞれの振幅値を検出し、その比をとって
複素弾性率を解析することは、システムとして、さほど難しいことではありません。

問題は、位相差の正しい測定と、その検証ではないかと思います。

動的粘弾性測定器は、主に、荷重(力)、位置の二つのセンシングデータを取得し、
後は、ほぼすべて、計算のみで成立しています。

システムは、入力されたセンシングデータを順番に処理しますので、ビット化された
二つの波形データは、交互に(必ずしも、一周期ごと、という意味ではありません)、
波形解析のために、蓄えられていくということになります。

あくまでも、二つのデータを交互に入力されることになりますので、二つのセンサ
固有の動作周期による遅延、A/Dコンバートの時間など、時間差を生む要因を、
物性以外で、システムに起因したものをいくつか思いつきます。

装置の動作は、メカニカルですし、例えば、データ入力のサンプリング周期を把握
することも可能ですので、数理的に補正することは可能です。

このように、「問題ないであろう」、というところまで持っていくことは可能と考え
ますが、
レオロジー的には、完全粘性体、完全弾性体というのはない、というように、例えば、
位相差が0° 、または、位相差が90° であることが担保されている、標準物というもの
が存在しませんので、実地的に検証することが基本的にはできません。

また、この実地的な検証は、動的粘弾性の動作周波数を変化させ、確認したいところ
ですが、
例えば、ある程度、厳密性を許容し、ニュートン流体とされる物体(位相差 ≒ 90°)
を用い、検証したとしても、高周波数域、つまり短緩和時間領域で、ニュートン流体
である物体は、えてして、低粘度です。

動的粘弾性測定機器にとって、低粘度(正確には、低貯蔵弾性率)の物体を、高周波で
測定することは、条件として苦手な方向です。
ここでまた不確定要素、または、その苦手要素を数理的に解消するために、補正する
などの必要性が出てくるため、気色悪い感じになってきます。

以上は、単なる開発上の苦労話として、厳密な話をしていますが、実際には、この
ようなことをさしおいても、動的粘弾性測定器は、非常に有用で、興味深いデータを
与えてくれますので、ある程度、「このようなものだと」気楽に使うのが、良いように
思えます。


ようやく、本題に戻りたいと思います。

【実測シリーズ】コロナ自粛期間中 速報的 液膜粘弾性の測定
では、液膜の動的粘弾性の測定の実施例を紹介しましたが、現象的な観点では、妥当
に思えましたが、前例が見当たらないことや、システムの信頼性を検証していません
でしたので、測定結果の妥当性がよくわかりませんでした。

今回、同じシステムを用い、せん断ひずみによる動的粘弾性測定に応用しました。

ここで、粘度値が既知で、ニュートン流体とされている、シリコーンオイルを用い、
・位相差が90° 付近で検出されるのか
・複素粘度(動的粘弾性測定から得られる粘度値)が、基準値に対し妥当か
について検証を行ってみました。

まず、せん断ひずみについては、こちらをご参照ください。
粘弾性について7)_伸長粘度はなぜ3倍? ~その1~_せん断ひずみと伸長ひずみ
一般的な、粘度計、動的粘弾性測定器で採用されている、ひずみ形態です。

せん断ひずみとは、以下のような立方体要素を、互い違いにずらした時の変形です。


粘度測定では、どこまでもずらし続けていくという格好になりますが、動的粘弾性の
測定では、下図のように、


立方体形状の状態を原点とし、正に、負に、対照的に振動させ、絶対値として、
ひずみ量、応力を得ます。
なお、動的粘弾性では、
・振動周波数を固定し、振幅の大きさを変化(通常は、小から大へ)
・振幅の大きさを固定し、振動周波数を変化
させて、それぞれの応答特性を得て、解析するなどします。


以下に、振幅の大きさ(ひずみ量)を変化させたときの結果を、示します。


3種のシリコーンオイル、以下の粘度値のものを使用しました。

  青:5 Pa・s
  赤:1 Pa・s
  緑:0.3 Pa・s

低ひずみ量域では、グラフが平坦でないことがわかりますが、変位、荷重(力)が、
微小、微弱なため、装置のセンシング能力に原因があるものと思います。
この辺は、まだブラッシュアップの余地があるように思います。

ひずみ量が、ある程度大きくなり、データが安定している領域では、位相差は、
概ね90° 付近で平坦性を示しているかと思います。


次に、ひずみ量を固定し、周波数のみを変化させて、測定した結果を示します。


ここでも、3種のシリコーンオイル、以下の粘度値のものを使用しました。

  青:5 Pa・s
  赤:1 Pa・s
  緑:0.3 Pa・s

ここで縦軸は、複素粘度で、動的粘弾性の測定から得られる、粘度値です。
複素粘度は、緩和領域では、いわゆる通常の回転式粘度計によるせん断粘度と、同じ
値を示します。

ちなみに、この緩和領域では、角周波数とせん断速度は、等価であるという、
コックス-メルツの経験則があります。
非ニュートン流体を測定したとき、粘度低下する程度に高せん断速度領域の、せん断
粘度値に、複素粘度は合致しない、というように言いかえられます。

この結果では、複素粘度が角周波数に対して一定で、ニュートン流体であることを
示しており、粘度値も、それぞれ、基準値と同じ値を示しています。

複素粘度は、複素弾性率を、周波数[Hz] × 2π で割り算して得られます。 周波数の
計測が正しいとして、複素粘度が妥当な値であれば、複素弾性率も妥当であると言え
ます。

概ねニュートン流体といってよい、今回使用した、シリコーンオイルの、ひずみ依存
測定では、位相差が、90° 付近の値が出ていることも確認できました。

今回、せん断ひずみ用の治具は、急造したものを使用したり、
低ひずみ領域のセンシング能力、をはじめとして、
システムとして、まだまだブラッシュアップの課題はありますが、とりあえず、今回は、
まずまず、妥当な測定結果が得られたものと考えています。

また、複素弾性率と、位相差から計算される、貯蔵弾性率も、損失弾性率も、まずまず
妥当な結果になるものと、判断できます。

ちなみに、商品情報によれば、今回使用したシリコーンオイルは、高粘度タイプのもの
ほど、シアシニング特性(高せん断速度で、粘度低下する)が出る傾向にあるよう
なので、厳密には非ニュートン流体といえます。
そのため、十分なシアシニングが起きない、低せん断速度、または低ひずみ領域では、
貯蔵弾性率成分が、まったくないとは言えない、という点に注意が必要と思います。


今回の、せん断ひずみによる粘弾性測定の結果も踏まえまして、
【実測シリーズ】コロナ自粛期間中 速報的 液膜粘弾性の測定
での、液膜の動的粘弾性の測定の実施例について、再評価もいただければ幸いです。

今回、見えてきた課題もブラッシュアップしつつ、多機能で手軽に使用できる、
動的粘弾性測定システムとして、商品紹介できるまで、開発を継続したいと思います。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


2020年7月27日月曜日

粘弾性について6)_動的粘弾性の測定原理


長らく先送りしてきた、動的粘弾性の測定原理について解説したいと思います。

前回、【実測シリーズ】コロナ自粛期間中 速報的 液膜粘弾性の測定 として、
動的粘弾性の実測例を紹介いたしました。

動的粘弾性の測定について、あまりよくご存じのない方には、内容があまりよく
伝わらなかったのではないかと思います。

本来、動的粘弾性の測定原理については、もう少し早い段階で、この内容を投稿
したいと考えておりましたが、遅まきながら、ようやく投稿にこぎつけました。


では、本題に移りたいと思います。


液体の流動抵抗は、粘性に起因し、粘度を測定することで、その抵抗の度合いを
調べることができます。
固体のかたさは、弾性に起因し、弾性率を測定することで、そのかたさを調べる
ことができます。

粘度にしても、弾性率にしても、ある物体のかたさ(的なもの)をあらわしている
ことに違いはありません。

ところが、完全な流体(粘性体)、完全な固体(弾性体)というのは、厳密には存在
せず、物体は、大なり小なり、粘性と弾性の要素をあわせもっている、粘弾性体です。

そのため、粘弾性の測定が重要になります。
粘弾性とは、さも一つの物性のように思えますが、単独で存在する物性ではないので、
ある一つの測定から、複合的に解析され、評価をします。

粘弾性は、横軸、縦軸に成分分けし、平面的に評価するという特徴をもとに、
粘弾性について1)_学校の定期試験を例にとった説明
粘弾性について2)_固体はかたい、液体はやわらかい?
にて、概念的な説明を行いました。



では、ここから具体的な説明に入りたいと思います。

まず、図1.をご覧ください。

図1.

滑車を用いて、ピストンを往復運動させている時のアニメーションです。
滑車が等速で円運動をしているとき、ピストンの位置を記録していくと、正弦波形
が得られます。
また、滑車の回転角度と、正弦波の横軸を対比させると、正弦波一周期は、360°
であることがわかります。

次にフックのバネ試験を、分銅の重さを連続的に変化させたとして、正弦振動で
行ってみたときのイメージが、以下、図2.になります。

図2.

刻々と変化する、ばねの位置(伸び)と、分銅の重さを連続的に記録すると、二つの
正弦波形が得られました。

二つの波形のピークの値、「重さ」を「伸び」で割り算すれば、弾性率が得られ、
振動をさせていようが何だろうが、本質的にはフックのバネ試験となんら変わらない
ことがわかります。

フックの法則に従い、重さと、伸びは比例関係ですので、ピークの値に限らず、同じ
タイミングどこでも二つの値の比をとれば弾性率が得られます。

実際に、縦軸に重さ、横軸に伸び、の関係であらわたしたのが、以下、図3.です。

図3.

このグラフの傾きが弾性率をあらわすことから、やはり、フックのバネ試験と、
何ら変わらないことがわかります。


次に、理想粘性体の場合の、荷重(力)と位置の関係性を、図4.に示します。

図4.

理想弾性体の時と異なり、力の波形が、位置波形に、90° 先行していることがわかり
ます。

力が、正または負で、最大値をとっているとき、位置波形は、原点位置にあります。
逆に、位置が、正または負で、最大の位置にあるとき、力は原点ライン上にあり、
つまり、力がゼロ、発生していないことになります。

ここで、ニュートンの粘性法則を思い出してください。

    [ 力 = 粘度 × 速度 ]

でした。
力は、速度に比例します。

ピストンは、原点ラインを通過するとき、最大の速度にあり、通過後、正、または
負のピーク位置にむかって減速し、折り返しとなるピーク地点では、瞬間的に速度
はゼロになります。

つまり、力波形は、ピストン位置の、速度状態に対応をしており、ニュートンの粘性
法則にしたがっていることになります。

位置を、時間について微分すると、速度になりますが、正弦波を微分すると、90°
シフトするというのは、なんとなく記憶にあるのではないかと思います。
数学的にも、上述のように現象論的にも、以上のように説明できます。


図3.では、同じタイミングで得られた、両波形の値の比をとれば、弾性率になる
ことを説明しました。
これは、フックのバネ試験と何ら変わらないと申しましたが、とりわけ、正弦振動
で測定を行った場合は、「複素弾性率」と呼びます。

次に、二つの正弦波形の位相の差に着目します。
位相差が0° の時、完全弾性体。
位相差が90° の時、完全粘性体。
0~90° の間にある時、粘弾性体であるということになります。

動的粘弾性の測定では、複素弾性率による、かたさ情報だけでなく、位相差の値から、
どの程度、弾性寄りなのか、粘性寄りなのか、性質の情報も与えてくれます。


ここまでは、三角関数の観点で説明をしてきたことになるのですが、オイラーの式
を用いることで、複素解析に結びつけることができます。
(ブログの目的、紙面の制限、筆者の説明能力、などの制約のため、オイラーの式に
ついてはふれません)

以下、図5.は、粘弾性について2)_固体はかたい、液体はやわらかい? の説明の
中で用いた評価例ですが、オイラーの式により、複素平面上に表すことができる
ようになります。

図5.

ここで、二つの正弦波の比である、複素弾性率は、かたさ情報を、ベクトルの長さ
としてあらわされます。
位相差は、原点位置における角度として、ベクトルの向きを決めています。
これにより、複素弾性率は、縦成分と横成分に成分分けすることができます。

縦軸は、損失弾性率といい、粘性成分(位相差90° の成分)を示し、虚数単位を
とります。
横軸は、貯蔵弾性率といい、弾性成分(位相差0° の成分)をしめし、実数です。


いかがでしたでしょうか。
複素数、虚数が出てくると、無条件で、「ややこしい」と思われてしまう面もある
ように思います。
実際には、かたさ(弾性率)を、単に、横・縦成分に、2成分分けしているのだな、
と理解すれば十分の測定・評価方法であると思います。


前回の、【実測シリーズ】コロナ自粛期間中 速報的 液膜粘弾性の測定 で紹介した
システムを用い、せん断ひずみによる動的粘弾性の測定への応用検証も、はじめて
おります。

次回、【実測シリーズ】として、ご紹介できればと考えています。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


2020年5月15日金曜日

【実測シリーズ】コロナ自粛期間中 速報的 液膜粘弾性の測定


前回の投稿から、だいぶん間があいてしまいました。

昨今のコロナ自粛期間中、いかがお過ごしでしょうか。


世の中、今回を機に、コロナ終了後も、在宅ワークの流れは促進されていくのかも
しれませんが、業務や時間効率が上がるのであれば、どんどんそのようになっていけば
良いのかなと思います。

私どもは、もともと在宅ワークの方式をとっていますが、特に不便を感じたことは
ありません。

ただ、今回のような自粛、緊急事態宣言下で、テンポラリーに在宅ワークを行っている
方は、お客様や、パートナーなどが稼働していなければ、やることもなくなってきて
しまうのではないかと想像します。

このような時は、「いつかやろう」、「ダメもとでやってみたかったこと」など、
最低の成果でもプラスマイナスゼロ、最悪でも会社やご自身に、損害を与えない結果
にしかならないようなことをやってみるのはいかがかと思いました。

申しました通り、もともと在宅ワークということもあり、ここまでの間、取り立てて
仕事のペースが変わることはなかったのですが、自粛の気分を変えたいと思い、
「いつかやろう」と考えていたこととして、液膜粘弾性測定装置の試作にトライして
みました。



前置きが長くなりましたが、今回のタイトルに戻りたいと思います。


当ブログでは、これまで、「粘弾性」に関係する内容がほとんどでした。

粘弾性については、主に、概念的なお話をさせていただきました。

粘弾性測定の実測については、本来は粘弾性の測定原理まで到達した後で投稿する、
という中期計画でした。

  ブログをかなりサボってしまっていたこと。
  「自粛の気分転換」。

これらはさることながら、
「液膜粘弾性の実測」については、なかなか目にすることはないはず、と思い、
今回、あげさせていただくことにしました。


いきなり測定データを示します。


白抜きのドットが貯蔵(バネ弾性)成分。
黒塗りのドットが損失(粘性)成分です。

バネ弾性、粘性成分については、よろしければ、こちらをどうぞ。
粘弾性について1)_学校の定期試験を例にとった説明
粘弾性について2)_固体はかたい、液体はやわらかい?

横軸は、周波数で、対数軸になっています。

食器用洗剤水溶液(確実にミセル濃度以上、正確な濃度は不明)の液(シャボン)膜
を作り、その膜をある方法で、ひっぱったり、縮めたりという動作を「正弦周期的」
に繰り返しました。

その際、膜の長さと、力の変化を、それぞれ正弦波のデータとして記録します。

変形の大きさと、力の関係から、弾性率が得られることを、
粘弾性について6)_伸長粘度はなぜ3倍? ~その1~_せん断ひずみと伸長ひずみ
で説明をいたしました。

これらの関係を正弦波で得ると、かたさである弾性率を、貯蔵成分と損失成分に分ける
ことができます。

この粘弾性の測定原理については、いずれの機会に投稿したいと思います。


往復運動の速度を上げていくと、特に貯蔵(バネ弾性)成分の顕著な上昇がみられます。


ミセル濃度を超える液膜には、洗剤に含まれる界面活性剤分子が、密に吸着し配向
しています。

界面活性剤の吸着密度に応じ、表面張力は低下します。

一方で、液膜を引き延ばし、表面積が増加すると、密であった界面活性剤が瞬間的
には「疎」の状態になりますので、液膜の表面では、界面活性剤濃度が低くなり、
瞬間的に表面張力は上昇します。
これは「ギブス弾性力」で説明されます。

液膜を引っ張ると、表面積を最小にして安定化をはかろうとする表面張力の作用に
より、縮まろうとしますので、表面張力はバネ弾性のように働きます。

以下、ウィキペディアで紹介されている動画を見ていただくと、イメージがよくつかめます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Surface_tension

いっぽうで、「疎」になった隙間には、すぐに界面活性剤が移動してきて、密の状態
になるため、表面張力を低下させます。
このメカニズムを「マランゴニ効果」とよびます。

高周波数領域では、液膜の表面積の増加に、界面活性剤の移動がおいつかないため、
弾性率が上昇し、
周波数が低い領域では、界面活性剤の移動がじゅうぶんにおいつくため、弾性率は
上昇することなく、安定していると、グラフからは思えます。

低周波数領域では、弾性成分が粘性成分を上回り、並行で平坦なグラフになって
いますが、配向した界面活性剤が、構造として液膜の安定に寄与しているのでは
ないかと想像します。


いかがでしょうか。


今回、試験を行ってみて、例えば、

  起泡性、泡安定性、フォーミング、テクスチャーなどを検討する際の、液膜物性
  の評価。
  目的に合わせた材料設計時の、界面活性剤の選定。

などに、実用性のある測定方法になるのではないかと思いました。

試作機をブラッシュアップしながら、色々な液体を試してみたいというように思い
ました。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


2019年9月15日日曜日

粘弾性について8)_伸長粘度はなぜ3倍? ~その2~_伸長ひずみを掘り下げる


前回は、ひずみの形態として、せん断ひずみと、伸長ひずみの定義について解説を
しました。

今回は、伸長ひずみについて、さらに掘り下げてみたいと思います。


まず、伸長ひずみの仲間を紹介したいと思います。
前回のブログでは、一軸延伸による伸長ひずみを説明しました。


この図から、なにかお気づきになりませんでしょうか。

伸長ひずみでは、引っ張ったり、縮めたりという「主軸」の変化に連動し、他の
軸も、伸びる、または、縮むといった変化が起きています。

ひずみが大きくなっても、物体の体積は一定ですから、どこかが伸びたら、どこかが
縮む、当然といえば当然ですね。
このことは、伸長ひずみを理解するうえで、大変重要なポイントになります。

例えば、下図のような物体に、一軸延伸による伸長ひずみを与えます。


体積が一定のとき、引っ張り長さ(L)の変化に対する、幅(D)は以下のように変化
します。
体積は、L × D^2 で、どこまで伸ばしても一定のはずです。
幅は、二乗で効いたDを、平方根で割り戻すことになるので、Lが大きくなるほど
変化が小さくなります。


伸長ひずみの計算のおさらいと、「ポアソン比」について説明します。


ここで、前回のブログのとおり、伸長ひずみ量は、(l - l0) / l0 でしたね。
伸長ひずみ量のシンボルを、ε とします。

幅方向のひずみ量も、同じように、(D - D0) / D0 で求めることにします。
幅方向の圧縮ひずみ量のシンボルを、ε' とします。

上記、引っ張り長さと、幅の関係を示したグラフを、ε'と、ε に置き換えたのが、
下図です。
なお、ε' は、収縮によって生じるひずみのため、マイナスの値をとりますが、
符号は気にする必要はなく、絶対値であつかえば良いです。


ひずみ量が小さい領域では、グラフは、ほぼ正比例であり、ε' は、ε の、ほぼ0.5倍
であることがわかります。

ε' / ε でとった比を、「ポアソン比」といいます。

・変形時に体積変化が伴わず、
・小ひずみ量 領域においては、
ポアソン比 = 0.5 であるとして、

       ε' = 0.5ε
       ε  = 2ε'

で、お互いに換算できるということになります。
幅方向のひずみ量から、延伸方向の伸長ひずみ量に換算できる、ということは、
伸長ひずみによる粘度や弾性率を測定するときに、実は、不可欠です。



今回、伸長ひずみのメカニズムの、第一歩に踏み込みました。

とりあえずは、物体に、変形、ひずみを与えたとき、断面積が変化する変形は、
伸長ひずみであると理解をしておいて、差し支えないと思います。

せん断ひずみは、変形の大きさに伴い、断面積(厚みや幅)の変化は、発生して
いないことが、前回の、せん断ひずみの図からも、わかると思います。

この差は、粘度測定により、物質の評価を行う際、大きな差を生みます。

このことは、まずは、「伸長粘度は、せん断粘度の3倍」であるところまで、たどり
着いてから、取り上げたいと思います。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。