2019年3月25日月曜日

毛細管現象_最初の発見者は誰??


これまでの投稿の中で、粘性と弾性の定義についてはいずれ掘り下げたいと、先送り
してまいりました。。

粘性については、ニュートンの流動法則。
弾性については、フックの弾性法則。

これらの定義を少しレビューしていたところ、ニュートンとフックには、毛細管現象
の発見という点でも、共有テーマがあることがわかり、急きょ今回の内容を変更して
しまいました。

粘性と弾性の定義については、またこんど、掘り下げてみたいと思います。


毛細管現象については、ヤングとラプラスが、1805年、同年に、それぞれが出版した
著書により、明確に理解されるようになりました。

ラプラスの著作は、液体の凹凸(メニスカス)を扱った自由表面などの観点から、
より解析的な内容であったのに対し、
ヤングの著作は、気体、液体、固体の間、熱力学的な相が関係する現象、という観点
から、数式が用いられない定性的な内容でした。

同年に出版された二つの著作は、このような点で対比されたりもしていますが、この
ヤングの著書で、初めて表面張力について述べられたようです。

ちなみに、上記のヤングの観点は、今日では「ぬれ」という分野に分類されるもの
ですが、「ヤングの式」をもちいて、ぬれ現象を説明したのは、この後の著作のよう
です。


ニュートンは、自身の著作である「光学」(1704) の中の、「Queries」という章で、

「2枚のガラス板を100分の1インチの距離に平行にならべて水の中に立てると、
水がこの2枚の板の間を約1インチ上昇する」

ということを確かめた、ということが、上記のヤングの著作の中で、述べられているよう
です。

このニュートンの説明は、まさに毛細管現象を観察した内容ですが、ヤングとラプラスの
著書の出版以前、100年も前のことです。


ところが、フックは、さらにその40年以上前の1661年、「毛細管現象論」を出版して
います。「毛細管現象論」はフックの最初の著作でもありました。

この著作の中で、
  毛細管の中に液体が上昇していくのは、管内と外側の気圧差のせい。
  気圧差が生じるのは、空気とガラスの相性が悪く、ガラス管の内部に空気が入り
  込みにくいから。
  この相性の良し悪しは、水と油が混ざらないこと、溶解や沈殿の原因にもなって
  いる。
と記しているようです。

ラプラスは、毛細管現象を圧力差から、ヤングの式は、気体、液体、固体、3相の相性
を説明しています。
フックは、ヤング、ラプラスの出版以前、150年も前に、すでに同じような着眼点を
持って毛細管現象を理解していたのだと感じます。

また、水と油の相溶(乳化)、溶解・沈殿(分散)には、物性として、表面(界面)
張力、接触角が、深く関係しています。
毛細管現象とこれらの現象を、ぼんやりとながらイメージできていた、表面張力の
概念を介して、関連づけ、理解をしていたのかもしれません。


ちなみに、出版物にはなっていないようですが、研究史の中で、毛細管現象を最初に
観察し、記録を残したのは、レオナルド・ダ・ヴィンチであるという説があります。
膨大なCodex(手稿)の中に、記録が残されているのではないかと想像します。



今回、ニュートンの粘性法則と、フックの弾性法則のとりかかりから、話がそれた形で
毛細管現象にふれました。

フックについては、フックの弾性法則以外、人物像も含め、あまり詳細がわからない
という印象がありました。
実は、ヤングとラプラスに先がけ、近代研究史の初期の段階で、毛細管現象について、
ユニークで、鋭い視点から説明していたことがわかりました。

同じ時代に活躍した、ヤングとラプラス。それと対照的に、同じ時代を生きたニュートン
とフックには、深い確執があったともいわれているようですが、粘弾性を理解するうえ
で、ニュートンの法則とフックの法則の理解は、等しく重要だと思います。
このシンプルな古典物理の法則の理解がほぼすべて、というようにも思います。


なお、「毛細管現象論」の4年後である1665年に、フックが出版した
「ミクログラフィア」は、現在でも入手可能なようです。
「毛細管現象論」で説明した内容の大部分は、この著書で知ることができるようです。
この機会に、ぜひ一度、読んでみたいと思いました。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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